アルタード・ステイツ@新宿ピットイン

 もはや私ごときが今さら何を語ればいいっちゅーんだ!? 久々のアルタード・ステイツ。素晴らしい。ドラムが芳垣安洋だけあって、リズムのうねりが気持ち良いんだけど、踊ってカタルシスを感じるタイプの音楽ではない。どこかでストップがかかるというか、踊ってしまうのがもったいない!と感じさせるものがあるというか。踊ってしまうことで直線的な聴き方になってしまうのを避けるため……かどうかは分からないけど、結果的にでこぼこした音が単純に踊ることを許さない。で、じーっと聴き入ってみると、内橋和久のギターが絶妙におもしろいことに気づく。一音で景色を変えるというか。そこにナスノミツルのプレーンだけど存在感のあるベースが入って、ちょうど良い感じの三角形ができる。芳垣さんのドラムは、ビートが強力なだけに、ともすれば単調になってしまう印象が時々あるのだけど、アルタード・ステイツの場合はそれがうまくハマっている。というか、逆にここに同類のドラマーを持ってきたら、かえって音が込みあって混乱するだけなのかもしれないな。なるほど!

 9月に活動15年くらいの記念イベントをするのだとか。楽しみだー! 仕事とかち合わないことを祈る!

Fine Time2リリースパーティー@新宿ロフト

 到着すると、既にフロアには熱気が充満していて異様な感じ。ちょうどポリシックスの林くんのDJ。雰囲気に馴染めずウロウロしていると、突然妙な電子音が。。


 と思ったら、ヘアスタイリスティックスこと中原昌也。もっと殺伐とした感じを想像していたのだが、意外にも音が丸い。でも、カラーボールがピョンピョン飛び跳ねているような印象で、相変わらず人の心をざわつかせるのが上手い人だ。体調が悪かったそうだけど、力で勝負するタイプの人じゃないから、全然問題なかったんじゃないかと思う。おもしろかった。


 で、ブリノイにも来てくださったコウキさんのDJをBGMに、最前列付近でスタンバイ。


 トリは言わずもがな、RECK+中村達也+大友良英という初顔合わせのセット。なんかわかんないけど、興奮しまくってしまう。いやあ、素晴らしい! RECK側に立っていたのだけど、一挙一動がいちいちカッコイイ。そのRECKに噛みつかんばかりの鬼気迫る表情で叩き続ける中村達也もスゴイ。音が硬い。手数の多さもさることながら、一音一音に魂がこもっている感じに圧倒される。で、そこに顔を上気させた元・ロック少年が一人(笑)。大友さんの嬉々とした表情に、こちらもつられて嬉しくなる。いつもは大脳から音を発しているような人だけど、この日は終始、脊髄反射。とはいえ、さすがに音の響かせ方、広げ方をよくご存知で、唸らせる場面も随所にあった。3人が3人とも、純粋無垢にロックが好きだったあの頃と、そこから磨き上げて今に至った過程の両方が垣間見える、説得力に満ちた音を鳴らしていた。やっぱ、図抜けていたなー。一夜限りにしておくのはもったいなさすぎ!だと思うんだけど。。

SAKATA/O’ROURKE TOKYO SESSION @新宿ピットイン

 坂田明(Sax)ジム・オルーク(G)坂田 学(Ds)ダーリン・グレイ(B)クリス・コルサーノ(Ds)

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 何でもジム・オルーク坂田明を敬愛しているのだとか。そして、ドラマーの一人、坂田学は、坂田明の息子。何とも幸せな巡り合わせでできたユニットである。


 会場はパンパンの超満員。往年のジャズ好きのオジサマもいれば、ポストロック好きの若造もいる。もちろんフリージャズ好きも。ここで何が起こるのか、予測がつくようでつかない演奏に会場全体がそわそわしている様子。


 そんななか、メンバー登場。クリス・コルサーノが幾何学的なリズムをカタカタを刻むのを契機に、ギターとベース、そして坂田学のドラムが立ち上がる。細い糸を少しずつ少しずつ紡ぎあわせるようにしながら、だんだん大きなうねりを出していく。ジム・オルークのギターが、先鋭で不安定で美しい。そこに覆いかぶさるようにベースが響く。クリスのドラムが差し色を入れる。パーカッシヴなそのプレイとは対照的に、坂田学はより大きなうねりを出す。ゆるいリズムは彼の真骨頂。新奇な音ではないが、絶対的にそこにあってほしいと思える音を出す、堅実なプレイがいい。


 テンションが八分目まで上がったところで、坂田明のサックスが加わる。高音と低音を凄まじいスピードで行き来する。安直にノイジーな方向には走らず、フレーズで聴かせるところがさすが。だんだんカオティックになっていくが、そのスタイルは崩れることはなく、しかし恐ろしくエネルギッシュ。ベテランというのはこういうことなのだと感じ入った。容赦なく突進するその音は、ジャズというよりはパンク。マックスな状態がそのまま10分以上続いただろうか、もうダメだ!というギリギリ限界ちょい手前でようやく終息。また細い糸を注意深くほどくように少しずつ音が消えていった。最後の余韻が消えるその瞬間まで、一秒たりとも気を抜けない、緊張感に満ちた演奏に圧倒された。


 第2部は、その振りきれ具合がさらに激しくなり、素面だった坂田学もかなりアグレッシヴに叩きまくっていた。しかし、リズムを管理していたのも彼。正直、この人がこんなに押しの強いプレイを聴かせるとは思わなかった。ポリシーのある人だ。これだからクリスも安心して遊べるんだろう(笑)。こちらはもう少し隙間をつくっても面白かったかも?とも思うが(外山明みたいに……)、ああいう若さも必要かな。


 思索的な繊細さと、野卑で原初的な生命力の両方が綱引きしているような、今回の演奏。あえて分かりにくいことをやるわけではなく、しかしただグシャっとぶっ壊すだけでもない、抑制の利いた暴走っぷりに、彼らの本気が見える。魂が鳴っているような音楽だった。

installing

tamaru(ベース)/横川理彦(ヴァイオリン)/杉本佳一(ギター)
……でも、やっぱ一番良かったのはコレかな。一聴、3人が奏でる和音の美しさで聴かせるユニットかと思ったが、だんだんそうでもない気がしてきた。和音自体はどの曲もほぼ同じパターンだし。ただ、そこにゆーーーーっくり流れる音も絡み合い、もつれ合いが美しい。同じ1音が、まるで熱で溶けた飴棒をねじるようにいろんな色を見せる。演っていることの面白さではなくて、そこに提示された音そのものの変化を楽しむための音楽。さっきのトリップ状態はさらに深化してしまい、海の中に漂っているようにフワフワと忘我の境地。終演後、上手く会話ができない自分が笑えました。

aspects

河合拓始(鍵盤ハーモニカ)/狩俣道夫(フルート)/中根信博(トロンボーン)/金子ねこ(トロンボーン)/有永道人(チューバ)/金野邦明(ダンス)/JOU(ダンス)
……単音のみ。それぞれが和音を奏でるわけでもなく、ユニゾンするわけでもなく。音の粒はきわめてハッキリしているのに、それがどの部分を担っていて、どうなっていくのか、まるで読めない。楽譜に起こすとすごく単純なんだろうけど、やたら頭使いながら聴いてしまったなあ。こういう音楽、好きです。中盤以降、(たまたまこの日疲れていたってこともあって)軽いトリップ状態に。音が色つきで見えてしまった気がして、そうなると存在しない音まで聴こえるもので、えーっとその先あんまり覚えてないかも(笑)。そんなわけで、ここにダンスが入るのはワタシには少しトゥーマッチでした。

EXIAS-J electric conception

近藤秀秋(ギター)/谷川卓生(ギター、ライヴ・エレクトロニクス)/宮崎哲也(ライヴ・エレクトロニクス)/神田晋一郎(ピアノ)/入間川正美(チェロ)/河崎純(コントラバス)
……こんなに楽器が多いのに、全然音が込みあっていないのが心地よい。曲によって音の圧力も組み立て方も全然違うのだけど、必ずどこかに無音地帯があって、メロディーはないんだけど何となく頭の中でメロディーが鳴ってしまう。そんな感じ。もっと聴いてみたかった。

変拍子で踊ろう@初台DOORS

 ちゃんと間に合ったのは高円寺百景のみ。小森慶子を加えた新態勢。キレイどころ3人の上モノが、男性2人のリズム隊に乗っかるという構成である。

 いつものことながら、小森さんの切れ味良くて端正な演奏がいい。音が小さくて聴き取りにくかったのが至極残念だけれど、この人が紡ぎだすフレーズを聴くと、何だかとても豊かな気持ちになれる。かなりブイブイ吹きまくる場面もあり、初加入ながらキーを握っているという感じ。イベントのタイトル通り、基本的には変拍子。でも、全然フツーに踊れる。いわゆる一般的なダンス音楽が、平坦なリズムに乗っかる安心感を与えてくれるものだとすれば、踊れる変拍子ってのは、次の段階でどうなるかわかんない不安定さがある。だから、右脳とか左脳とか視覚とかいろいろ駆使してうまく乗りこなさなきゃいけないという負荷がかかる。それが面白い。筋肉で踊るというよりは、細胞で踊るという感じ(意味不明・笑)。そんな感じで、さして運動はしていないのに、何故か爽快な疲労感と、言い尽くせぬほどの満足感を味わえたライブだった。