SAKATA/O’ROURKE TOKYO SESSION @新宿ピットイン

 坂田明(Sax)ジム・オルーク(G)坂田 学(Ds)ダーリン・グレイ(B)クリス・コルサーノ(Ds)

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 何でもジム・オルーク坂田明を敬愛しているのだとか。そして、ドラマーの一人、坂田学は、坂田明の息子。何とも幸せな巡り合わせでできたユニットである。


 会場はパンパンの超満員。往年のジャズ好きのオジサマもいれば、ポストロック好きの若造もいる。もちろんフリージャズ好きも。ここで何が起こるのか、予測がつくようでつかない演奏に会場全体がそわそわしている様子。


 そんななか、メンバー登場。クリス・コルサーノが幾何学的なリズムをカタカタを刻むのを契機に、ギターとベース、そして坂田学のドラムが立ち上がる。細い糸を少しずつ少しずつ紡ぎあわせるようにしながら、だんだん大きなうねりを出していく。ジム・オルークのギターが、先鋭で不安定で美しい。そこに覆いかぶさるようにベースが響く。クリスのドラムが差し色を入れる。パーカッシヴなそのプレイとは対照的に、坂田学はより大きなうねりを出す。ゆるいリズムは彼の真骨頂。新奇な音ではないが、絶対的にそこにあってほしいと思える音を出す、堅実なプレイがいい。


 テンションが八分目まで上がったところで、坂田明のサックスが加わる。高音と低音を凄まじいスピードで行き来する。安直にノイジーな方向には走らず、フレーズで聴かせるところがさすが。だんだんカオティックになっていくが、そのスタイルは崩れることはなく、しかし恐ろしくエネルギッシュ。ベテランというのはこういうことなのだと感じ入った。容赦なく突進するその音は、ジャズというよりはパンク。マックスな状態がそのまま10分以上続いただろうか、もうダメだ!というギリギリ限界ちょい手前でようやく終息。また細い糸を注意深くほどくように少しずつ音が消えていった。最後の余韻が消えるその瞬間まで、一秒たりとも気を抜けない、緊張感に満ちた演奏に圧倒された。


 第2部は、その振りきれ具合がさらに激しくなり、素面だった坂田学もかなりアグレッシヴに叩きまくっていた。しかし、リズムを管理していたのも彼。正直、この人がこんなに押しの強いプレイを聴かせるとは思わなかった。ポリシーのある人だ。これだからクリスも安心して遊べるんだろう(笑)。こちらはもう少し隙間をつくっても面白かったかも?とも思うが(外山明みたいに……)、ああいう若さも必要かな。


 思索的な繊細さと、野卑で原初的な生命力の両方が綱引きしているような、今回の演奏。あえて分かりにくいことをやるわけではなく、しかしただグシャっとぶっ壊すだけでもない、抑制の利いた暴走っぷりに、彼らの本気が見える。魂が鳴っているような音楽だった。