林栄一・内橋和久・外山明・古澤良治郎 @音や金時

 2004年のライブ納め。当初3人で始まったこのセットも、すっかり4人が定着したようで。今回は、古澤さんが普通のドラムセット、外山さんはパーカッションに器具を付けてドラムセットに組み上げたもの+シンバル+スネア+ハイハットのオリジナル仕様。PAを通さないから、音がぶつからないようにとの配慮もあったのだろう。実際、音のバリエーションが増えて、豊かさが増した。特にバスドラに使用されていた、長さ60センチはあろうかという楽器は、見た目のゴツさの割には、ポン!と抜けるカワイイ音。安田大サーカス並みの違和感だ(笑)。
 さて、ライブの方だが、今回がこれまで観たなかでベストだった。序盤は音のバランスが悪く、お互いに加減しあったり探りあったりする節も見られたが、中盤以降は怒濤の展開。やはり出音の弱かった外山さんのペースが上がるにつれて、全員がアクセル全開になる過程はほんとうに面白い。特に今回はそのアゲ方がダイナミックでゾクゾクさせられた。
 完全即興である以上、打ちあわせや予測の範囲を超えたところにあるはずなんだけど、かといって無理はしない。とんでもなく面白いフレーズが飛び出したりする瞬間は幾度も訪れるが、それがショッキングな展開でもって不意に現れるのではなく、至極自然な流れの中で滲み出てくるのだ。気持ちよさと驚きの応酬。“節度ある”とさえ言いたくなるような確かさが底流にあるからこそ、フレーズの妙味が前に出るし、持ちネタの豊富さに裏打ちされたアイデアがあるからこそ、さしたる飛び道具は必要ない。まあその意味では爆音やらエクストリーム音楽とは真逆なんだが、どっかでつながっているような気もしなくはない。いや、たぶんつながってると思う。こじつけかもしれんけど。
 にしても、内橋さんの演奏は、ギターにせよ何にせよ、見事に耳に引っ掛かる。うるさいワケじゃないのに、心揺さぶられるんだなあ。林さんはリードだから、まさに仕切り役なんだけど、それを陰でコントロールするのが、内橋さんが放つ一音だったりするのが興味深い。で、古澤さんのリード&時々出るブッ飛びプレイに対して、外山さんの差し色。この2人は底流にあるリズム感が非常に似ているなあといつも思うのだけど、やっぱり基本的な立ち位置が若干異なる。古澤さん=ドラマー、外山さん=パーカッショニスト、というふうに。それがまた興味深い。
 とまあ、そんなこんなで、幸せを噛みしめた一夜でした。