メタル・マスター

 別の日記に、メタリカの来日ライブのことを書いたのだけど、そこで「曲名が何とかって情報は期待しないで!」とあらかじめお断りしたところ、ある友人からツッコミが入った。「爆音好きでビースト・フィーストが生き甲斐とか言ってるわりに、メタリカのことはそんなに知らないんだね。驚いた」と。いや、そうなのだ。メタリカに限らず、というかむしろメタリカは、義務感に駆られてそれなりにお勉強したからまだ私にしては知っている方で、他のメタルにはもっと疎かったりする。自分としては、そもそも開眼したのが90年代以降(グランジ以降とも言う)で、それ以前のメタルに関しては、かなり意図的に関わらなかったわけで、今、爆音が好きなことと、かつてメタリカを聴かなかったこととは全く矛盾しないのだけど、どうも世間的にはその理屈は通らないらしい。確かに、「どういう音楽が好き?」と訊かれて「うるさい音楽です」と答えた瞬間、LAメタルやらNWOHMやらの話をされて、とまどってしまったりすることが多い。「どうせならブラックメタルとかスラッシュメタルとかの話をしようよ〜」、と思わず言いそうになるが、さすがに変人っぽいので、グっと我慢。

 結局のところ、そのうるさい音とかヘヴィな音に何を見いだしているかが、人によって案外まちまちであるということなんだろう。で、その人それぞれに好きの基準はわりと一定しているのだけど、それは往々にしてジャンルとか年代では括れないものだから、他人から見た人の好みはとっても不可解だったりする。そこが面白いんだけど…。ただ、他の音楽好きな人はどうか知らないが、私自身に関しては、好き嫌いはハッキリしているものの、その基準がよく分からない。ただの聴かず嫌いってこともあり得る。だから「メタリカなんて知らねえよ!」とは言えない弱さがある。また、知らないって奴に「それでいいと思ってんのかっ!」と逆に責め立てるくらいの存在感が、このメタリカというバンドにはある。ガンズやボン・ジョヴィなら知らなくても許されるけど、メタリカを知らないなんて許せない!みたいな空気が、どうにもある。…ような気がする。

 なんてね。ここで実際にライブ観て、「メタリカって、なんぼのもんじゃい!」って言えればよかったのだけど、初めてだったりしたせいか、えらく感激してしまった。好きとか嫌いとかじゃなく、なるほど訴求力があるのはよく分かるよ、と。ようやく人並みの認識を持てるに至った。というか、至ってしまった。少し落ち着いて考えてみると、少し負けたような気もするケド…。まあでも、『セイント・アンガー』みたいな特殊な作品を作ってしまった今の彼等の、ある意味捨て身の精神状態が見て取れたのは、良かったのかな。

 とはいえ、メタルを通らないヘヴィ音楽の系譜ってものがあることは、ちゃんと考えないと。というわけで、続きは次回。