勝井祐二+大友良英in the dark@曼荼羅2

 目を開いているか閉じているかさえ判然としないほどの完全な暗闇の中で聴く今回のスタイルは、メールス・ニュー・ジャズ・フェスティバルの企画を日本で再現したもの。いかなる光も差し込まないよう、あちこちに手が施された会場。開演前には、勝井さんから諸説明(笑)。「真っ暗なので、移動禁止。トイレもタバコも我慢してください。気分悪くなった人は…………、我慢してください」
 
 まずは、その勝井さんのソロ。細い糸を紡ぎ合わせるような繊細な演奏。目を見張るような、とか、総毛立つような、といった内容ではないけれど、音の位置を確かめながら、ゆっくり噛み砕くように聴くと、黄色い音の絨毯に乗って空を飛んでいるような気分に。視覚を断たれた状態で聴くとはどういうことか、まずは体感。
 
 で、そろそろ慣れたかなー?というところで、大友さんのソロ。いきなり後ろの上の方から音がガツン!とぶつかってきて、マジビビリ。そういや会場後方にあやしげな黒い幕をかけたスピーカーがあったっけ?と思い出したのはライブ後で、その最中はそんな余裕もなく。。金属をガンガン殴るような音(ウォーターホーンという料理用ボウルの縁にに金属の棒を立てた自作楽器。長さによって音階が違って、叩き方によっては果てしなく音が響く)もおっかなくて、掻き乱されっぱなし。見えないと先が読めないから、身構えできないんだよなー。残響は澄み切って美しく、夢心地。と思っていたら、またあらぬ方向からガツンとやられて……。実際には聴こえるはずのない方向から音が飛んでくる気がする、あの幻惑感はいったい何なんだろう??
 
 最後はデュオ。まさに勝井+大友といった内容。どうやったって真っ暗なんだから、通常の即興演奏のように相手との距離を測ったり反応しあったりすることはできないけど、音そのものの偶発的なやりとりが面白い。頭ン中に異空間がどんどん広がっていく感じもイイ。
 
 まあ、もう少し音量が出れば……とか、床に座っていたために身体に受ける衝撃が弱められたかも……とか、まあ残念なこともあったけど、こんなに音を聴くことそのものに神経を集中させたことって、そういやなかった気がするな。貴重な体験でした。再演望む!