MIYA@新宿ピットイン

 先頃アルバムをリリースした才媛、MIYAが、自身で企画して実現させたのが今回のライブ。メンバーは、
MIYA(Fl)、井上ゆかり(P)、水谷浩章(B)、外山明(Ds)、ゲスト:向井滋春(Tb)。

 清楚で茶目っ気があって、このうえなくカワイイMIYAと、ヨレっとシャレを利かせる向井滋春コントラストが面白い。さらに、井上ゆかりもピリっとした美人。キレイどころが2人も揃うと、見ているこちらはちょっと照れる(笑)。

 スタンダード、ブルース、それぞれの持ち曲といった、MIYAのセレクトによる構成。個人的には、知ってはいるけど馴染みのない曲たち。でも、楽曲云々よりもMIYAが奏でる澄んだ音色を聴いているだけで、ご飯3杯はいけそうな感じ。フルートのテクニカルなことはよく知らないけれど、彼女がとてつもなく上手だというのはわかる。背筋が伸びた、丁寧で綺麗なプレイ。しかし小奇麗にまとまっているわけではなく、ところどころウイットに富んでいる。決して我を強く出したり、トリッキーなプレイをするわけではないのだけど、耳が勝手に吸い寄せられる。変わったことをして耳目を引き付けるのは簡単だけれど、彼女はあくまでも正攻法。しかも、上手なプレーヤーにありがちな窮屈さは一切なく、むしろ懐にゆとりを感じさせる。彼女を囲む名プレーヤー達は、きっとこのあたりに惹かれるんだろうなあ。ベテランの向井でさえも、彼女と戯れるのが愉しそう。。ホントに気持ち良く堪能させてもらいました。

 水谷&外山は、今さら言うに及ばず。戦友みたいなもんだからね。。完全なスタンダードを叩く外山さん、って、けっこう珍しいかも? キックのタイミングが妙だったりするところがたまらなく面白い。普段ほど“1人ポリリズム”みたいなのは出てこなかったけれど、代わりにタムの回し方が利いていた。スネアでバコバコ!ってのは若干控えめ。全体の流れに沿いつつ、時々シャキっと差し込む感じ。
 そのタムとバスドラの音、タイトながらいつもより反響していて、音の粒が妙にくっきり。今まで聴いたことのない音だなあー、と演奏中からずっと気になっていたのだけど、終演後に聞いてみたら、やっぱり新しいセットだったらしく。たぶん胴体の部分がこれまでのより硬くて、それゆえ音が響くのだそう。低音の深い音は出ないけど、今回はいろんな楽器が噛みあうからこれくらいが良いかなと思って、だそう。「ドラムなんて何でもいいんだよー」と言いつつ、器材のセレクトがいちいち理に適っているから面白い。最近のライブは、終わった後の種明かしがもうひとつの楽しみになっているのであった。。

 一方の水谷さん、他の人がメインの時はちょっぴり渋めでタイトな音を、ソロではMIYAのフレーズをしっかり引き継いで、泣きたくなるほどふくよかな音を出していた。へーっ!と思わせられる場面が多かったのだけど、彼のそんなメリハリが全体のバランスを絶妙に取っていたと、後になって気づく。凄い!

 で、そんなバランスを残念ながらぶっ壊してしまったのが、ピアノの大西ゆかり。偏差値の高いクレバーな演奏は確かに優れているが、キレ者ならではの我の強さが鼻につく。もっと周囲の音を読まなきゃダメだと思うんだけど。。その場にある音にいちいちジャストに絡んでくるから、ちょっとジャマ(笑)。すべてを語り尽くそうとするタイプって、ホント苦手。水谷さんが彼女とのバッティングをうまくかわしていたから良かったものの、リズム隊もバッキングもメロディーもやれる楽器だからこそ、“引き”をもっと考えてほしかった。
 ……ま、そういう個性がバッチリはまる場面もあるんだろうけど。。相性が悪かったっちゅうことだな。

 というわけで、ライブとしては完全ではなかったけれど、それだけにいろんな面が見えて、後になって考えてみると面白い体験ができた。MIYAはもっともっと観てみたい。この先もどんどん良くなっていく気がする。楽しみだー!