コンヴァージ

 で、個人的にメインディッシュ。これまで来日は、東京で観られる限りは全部観てきたが、今日のこのライブは自分にとって特別なものになった。確かに序盤は、ドラムのあまりに尖った音に馴染めず、ギターとのバランスも欠いていたため、ん?と思ったが、それはすぐに解消されて、とりあえずホっ。。それでもドラムの音は相変わらず鋭くて、悲しいかなアラ(音のムラ、テンポのブレ等々)が目立ってしまったりはしたが、もうそんなことはまったくもってどーでもイイ! とにかく素晴らしすぎ。

 音に無駄がない。作り込んだり考え込んだりしている感じはないが、ここにはこれしかない!という音しか、このバンドは鳴らさない。まず、そのブレのなさがポイント。かといって、カッチリしているとか息苦しいといったことはない。熱っぽいし、破壊的。でも、衝動的なワケじゃない。同じことはヴォーカル、ジェイクにも言えることで、声もさることながら、あのマイク捌き(イギー・ポップ並みに?振り回してます…)、決めポーズ(?)、立ち姿、すべてが完璧。でも作られているわけじゃない。「やっぱウチで鏡の前で練習してるのかな(笑)?」とか友達と言ってみたりしたが、そうだとしてもそれだけではない。たぶんもっと根っこの問題。怒りとか悲しみとか。。悪意以外のネガな感情が根底にきっとある。でもって、そこに捕らわれてはいない。既に発散する方法を知っているから。いろいろあっても彼の中ではちゃんと整理がついている。その上で、振りきれることだってできる。だから、衝動に突き動かされているように見えても、どこか違う。衝動というモノに甘えていない。何かに突き動かされているとすれば、それは作品として完成させようという高い志。だから、完璧だから凄いという言い方はしたくないが、完璧としか言いようがない。
 ちなみに、ジェイクがバンドを始めたのは、13歳くらいのこと。生まれてたった十余年の間にいったい何が……!?

 そのジェイク、今回はいつにも増して神々しい光を放っていた。駆けずり回って荒れ狂う瞬間、首にマイクコードを巻き付けて立ち尽くす瞬間、客にマイクを向けて煽る瞬間、どこを切り取っても緊張感がビリビリ走っている。どんだけすごい集中力だ…。そりゃ年間300夲もツアーできるわけだ。頭からかぶった水やら汗やら涎(?)やらがライトに煌めく中、微動だにせずたたずむジェイクは、もはや超越的。思わず涙。

 最年少ゆえ天然でのびのびやってるドラムのベン、うぉー!とやたら客を煽りまくるお調子者のネイト、秋葉原が似合いそうな(失礼!)サウンドおたくの職人肌カート、そしてバンドのトータルビジョンを常に思い描き、統括し、自ら体現する文字通りのフロントマン、ジェイク。誰1人欠けてもダメ。これまでメンバーチェンジもあったが、今がベストだな。でもって、新譜『ユー・フェイル・ミー』の曲がどれも耳に残る名演。インタビューで「ライブではもっと良くなるはず」と言ってくれたが、ホントにその通りだ。彼らにとってライブとは、アルバムで作り込んだものに息を吹き込む場。そんな瞬間に立ち会えた幸せを噛みしめた一夜だった。