10月16日(土)林栄一×外山明@国立NO TRUNKS

 即興というのは、どういう形であれ対話だと思う。初めてなら多少は緊張しながら、そして次第に探り合いながら、やがてお互いに手のうちが見えてくると今度はそれを転がしながら、あるいは裏切りながら、音と音とのやりとりが進んでいく。実際、これまでの彼らのセッションでは、林の入魂のアドリブに対して外山がすかしたり、あるいは林のメロディアスなサックスに対して外山が手を変え品を変えのリズムパターンを、時にポップに、時に激しくあてがったり…。劇的な局面というのがあちこちにあって、それはそれで非常に刺激的で、たまらなく面白いものだった。

 しかし、それはまだセッションの回数が浅い状態でのこと。すでに相手が見えた今回は、さて、どうするか?? ガツンとブッちぎるのもアリ。引き算の美学を渋く見せるのもアリ。

 でも、この日はそのどちらでもなかった。何というか、もっと密な対話というか。。

 それはとても微妙なやりとりで、一聴しただけではごく普通の慣れあいにさえ受け取れる。しかしよくよく聴いてみると、少しずつずらしながら、はぐらかしながら、言葉少なに続く豊饒な会話。いつもはパーカッションやらバラフォンやらで語彙の豊富な応酬をする外山だが、この日はシンプルなドラムセットのみ。そこにも、直に対峙しようとする2人の姿勢が窺える。…というのは、穿ち過ぎか? ともあれ、急激なアドリブにも、ローテンションな静寂さにも走らず、淡々と続く会話は、それだけにズルズルと引きずり込まれるような引力を感じたのだった。。いやー、面白かった!

 ところで、前に林・内橋・外山のインプロなんかで見かけて以来、ずっと気になっていたのだけど、外山さんのバスドラがこの頃デカくなった。これがやたら音が良い。音が深いのだ。響きの良さはハンパじゃない。かといって、音がこもったり団子になったりするわけじゃない。ちゃんとキックのインパクトもある。サンバのパーカッションを応用したものだそうで、踏み込んだ瞬間とても気持ち良い音が出るのだとか。ご本人もおっしゃっていたが、確かにバンドなどでアレを使っちゃうと、ちとうるさくなるのかもしれないが、今回のような編成だと非常に映える。ホント、凄く良いっすよ! 正直、バスドラでこんなに感動したのは初めてでした。